昨日見に行って参りました。 あまり日記で語ったことはありませんが、豊川さんはけっこう好きな役者さんです。最近はあまり熱心に作品を追いかけていませんが、豊川さんが「トヨエツ」と呼ばれるようになるより以前は、わずかの出番を求めて映画あさりをしたものです。
平日だし、割引のある日でもないので、観客はかなり少なめでした。その中で自分は一番の若者でした(笑) このあいだのシュアリーでは一番上だったのに。
先に文句を言っておこう。 エンドロールに流れるJ−Popな主題歌が雰囲気ぶち壊し。おのれエ○ベックス。たぶん資金集め関係のアレなんだろうなあ。
まあ、貶すところはそれくらいで。 人によっては退屈に思うかもしれないけど、個人的には良い映画でした。 ああ、豊川さんもこういう役が似合うようになったんだなあ。 藤沢周平作品って読んだことなくて、清左衛門残日録のドラマと蝉しぐれの舞台見ただけなのですが、そこで感じた、昔の日本人の実直で慎ましく、日々の些細なことに喜びと美しさを見いだす生き方と、そのささやかな生活が権力闘争などに揺るがされる悲しさなどは、この映画でも充分に味わうことが出来ました。
なんといっても所作の美しさ。ふすまを開いて入室する、ただそれだけのことのなんと奥ゆかしくきれいなことか。 ほとんどBMGが使われていなくて、些細な動作に伴う衣擦れの音が強調されています。 (まあ、たまにあるBGMは残念ながら全体にはったりかませすぎで凡庸な感じでした。あれならないほうがマシ)
以下、かなり深刻なネタバレかます予定ですので、隠します。
冒頭桜散る中、藩主以下、城のもの総出で能見物をしてるわけなのですが、ここで演じているのが「殺生石」という時点で、個人的に勝手に(おお、すごい)と感心しまくっておりました。 殺生石というのは九尾の狐のお話で(「うしおととら」の白面の者ですね)、帝に寵愛された美女の正体が狐であり、日本に渡る前はインドや中国で権力者に取り入り惑わせ、悪逆非道を行わせてはそれを楽しんでいたという。正体がばれて退治された後も毒を吹き出す石となって生き物を殺し続けたという話です。 つまり、この映画の中で、藩主の愛妾が藩政に口を出すようになり、悪政が続いて領民が苦しんでいたという背景と合致させているわけです。 別に知らなければ知らないでなんの問題もない場面なわけですが、こういうのってあきらかに意図して使ってくるから知っていると楽しい。「花の乱」の「大江山」とか「魔界転生」の「船弁慶」平知盛が幽霊だとか。 まあ、普通に考えるとわざわざなんで藩の皆様がご観覧するのにその演目にするのかと(笑) 無難に羽衣とか養老とかにしておけば。
で、その愛妾を主人公がいきなり殺してしまうのですが、なぜか下された沙汰は意外なほど軽いもの。一年の蟄居閉門と減禄。 勤勉実直を絵に描いたような男が、凶行に及んだ理由は、回想を挟んで少しずつ明かされていきます。 まあ、前半は、一年の移ろいを丁寧に描きつつ、藩の陥っている窮状が徐々に観客に見えてくる構成。 退屈に思う人もあるかも知れないけど、北国の自然の美しさを取り入れた描写の細やかさにすっかり見入りました。 主人公の病死した妻の姪がずっと身辺の世話を焼くのだけれど、これがあきらかに主人公に惚れている。惚れてるんだけど、そんなことは一言も言わずに献身的に使えてる。なんともいじらしい。
閉門の解けた主人公は何故か藩主の側使えの役を仰せつかるのだけれど、あきらかに藩主に嫌われてるし、針のむしろな日々。もちろんその昇進には思惑が隠されてるのだけれど……。
ここから先はさすがに書けません。まあ、たぶん皆様予想どおりですよ。
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