なんかもう、ひと月経っちゃって記憶も曖昧だけど、「渋谷」を見に行ったときのこと書いておこうか。 泊まるホテルは品川にした。秋にエレクトロニックガールを見に行ったときと同じホテルにしても良かったんだけど、なるべくいろいろ違ったとこに泊まってみたかったし。夏、ライブに行って突発お泊まりになったとき、品川は新幹線停まるし、(ラブの付かない)ホテルもいっぱいだと知った。ビジネスマン比率が高い雰囲気が、化粧気も洒落気もない中年女がうろうろしていても紛れてしまえる感じがした。自意識過剰とわかっていても渋谷はあまりにも己の「異物感」に街から排斥されそうな気分に陥るのだ。 ホテルは品川プリンス。駅のすぐそこ。でも迷った(笑) 棟がいくつかあって、ビジネス利用向けシングル専用のとこ。本当にビジネスユースに特化した感じで、アメニティとかちょっと味気なかったかな。 若干疲労気味だったので、今回は散財を自分に言い訳するための観光などは無し。 駅直結の商業施設で、テレビで紹介していたワイシャツ専門店によってダンナのシャツを数枚購入。自分のものも買いたかったけど、入るサイズがなかったんだよコンチクチョウ。
嫌だ嫌だと言いながら、自分の見たいものはここでしかやらないものだから、足を運ばざるを得ない渋谷。ユーロスペースまでは案内も何も見ずにスイスイ行けるようになってしまった。 平日の夜遅くだというのに、30人くらい観客がいた。カップルも男性客も。……なんというんだろう、自分みたいな「お目当ての俳優さんを見に来ました〜」という層ではなくて、映画好きで単館系の映画はほぼハシゴしてます、今日も映画を見に来ました、という雰囲気の人が多かった気がする。 地域のフリーペーパーで「渋谷」を大きく取り上げてユーロスペースで配布しているという話だったけど、どうもそれは無くなってしまったらしい。壁に貼ってあるのを上演終了後読んだ。
映画の内容については……なにを、どう語ればいいだろう。
なんというか、自分は評価することを最初から封じられた気がする。 自分は、親の愛情に恵まれて育って、十代の頃取り立てて大人社会に対して反抗心も抱かず手のかからない学生で、今もありがたいことに社会的にそこそこ安定した生活をしている。 そんな自分が、あの危うげな若者たちに何を言う資格があるだろう。 自分とまったく異なる境遇の、自分の貧困な想像力では思いも寄らないものを抱えている少女たちについて、自分がどうこう考えるなんて、不遜であり許されないことだとしか思えなかった。 (この居心地の悪さを感じたのは私だけじゃないらしく、三石さんのファンブログでも同じような感想書いてる人がいた) 自分はただ与えられる情報をハァハァと相づち打ちながら受け取るだけ。
んで、この映画については、事前に読んでいた綾野さんの役作りの凄まじさがあまりにも強烈で、それの印象がきつすぎて、内容が自分の中に入るときにぶれてしまったような気がする。 ていうかこの物語の主人公(ていうか狂言回し)の青年の境遇はどこまで綾野氏本人と被っていたのだろう。……あんな半端に家庭境遇の複雑さを露呈するようなインタビュー載せるから……知らずに済むなら知りたくはなかった。 あんな気弱で、嘘が下手で、押しが弱くて、不器用で、優しい青年……はまりすぎてて、こっちも混同してしまう。
映画の中でプチ家出中の少女が、渋谷にあこがれていた、ここには何でもある、ずっとここに住みたい、と言っていたのを見て、なんとなく何故自分は渋谷が苦手なのか少しわかった気がした。あの街では欲望が剥き出しなのだ。欲望という言葉に語弊があるなら、人の生の感情、でも良い。他の街ならお行儀よく隠されている人々の生の部分があの街では表に出てる気がして。他の街ならどんなに人混みの中でも自分以外の人影はただの風景にしか過ぎないのに、あのスクランブルに立つと大勢の一人一人がそれぞれまったく違う人格を持ち生活を持つ生きた人だという事実が迫ってきて、自分自身が処理しきれず壊れそうになる。 何いってんだコイツ、と思われるでしょうね。自分もそう思いますよ。 なんていうか、自分は、電車に乗って、夜の街を横切って、点っている窓ひとつひとつに人がいて、それぞれ何かをしているのだと思うと、空恐ろしくなってしまう人なのですよ。全くの他人で、想像も付かない誰かが、ものすごく沢山いて、それぞれのたった一つの人生を生きてるなんて、自分の想像を遙かに超えていて、そんなのただの明かりでしかないと存在を忘れてしまいたい。自分の身の回り以外のことなんて、自分の頭じゃ処理できない。
うわ、ホントに何書いてんだかわかんなくなってきた。
でも、まあ、あの映画はあれでひとつのハッピーエンドだったのかな。 ひとつのつながり。 誰かが自分を知っていること。 誰かが自分を探してくれたこと。 自分のためにしてくれたこと。 それがあれば、生きていけるのだろうか。
上映後、壁に掲示されたフリーペーパーの、綾野さんのインタビュー読んで、初めて渋谷に行ったとき全員が敵に見えた、と書いてあるのを見て、ちょっとほっとした。
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