2013年2月9日 四大陸女子ショート、男子フリー観戦
縁あって、人生初のアリーナ席での観戦。 ネットでの知り合いをナンパして、ご一緒していただきました。 なんかこう、普通のスタンド席とは雰囲気が違うというか、最前列の人たちが足元やフェンスのとこに花束がぎっしりと詰まった袋を置いていたりして、準備万端って感じ。 演技全体を見るにはスタンドのほうが良い、とは思いました。 リンクの使い方とか、どんな要素を行っているのか全体が見える方がいいし。 近すぎると、フェンスで下半身が見えないのですよ。 あっこちゃんのキルビルの超カッコいいハイドロが見えなかったのが無茶苦茶残念。 でも、近いとなんだか興奮度が違う。 今まで、人気選手の演技中に客席に近づくだけで歓声が上がる様子を、ついつい笑っておりましたが、実際アリーナに座ると、選手が良い演技をしていると近くに来た時に快哉を叫ばずにはいられない。「いいぞ!」という気持ちを伝えようとせずにはいられない。 これは実際にその場に身を置いてみないとわからないことでした。
女子はとにかくみんな綺麗でかわいかった。 衣装も素敵。 とにかくキラッキラでふあああ〜となった。 特にジジュンちゃん。 演技を始める前にコーチと何か話していて、急にぷくっと頬をふくらましてから笑ったのがあまりにも可愛らしくて卒倒するかと思った。 あと、演技後、客席から一輪の薔薇を受け取った選手がいて、なんか素敵だなと思ったけど、後日、だんな様からだと知りました。 女子の話はほぼ省略でごめんなさい。 日本人三人娘大活躍でした。 かなこちゃんの新衣装、若草色とピンクのグラデーション、桜餅説もあるようでしたが、私はきれいで好きだと思いました。 あっこちゃんはハイドロが見られなかった〜(まだ言うか) そして浅田さん。さんざんこき下ろされていた肌襦袢は、生で見るとそれほど気にならなかった。 それまで長らく封印していた3Aの解禁、ということで、会場は静かな興奮に包まれていましたが、成功の瞬間大歓声。キスクラで泣きそうでしたね、浅田さん。
さて、男子。 の話の前に。
自分から見て斜め上に位置するスタンドの一角に、白いバナータオルと風船バット(?)を手にした揃いの縞法被の人たちが、きっちりと四角く占拠していらっしゃいました。 たぶん阪神の応援団の方々が迷って来られたのだと思います。どうやってチケット調達したんでしょうね。
それから…… うん、嫌な話は先にかたづけてしまおう。
私の左隣の席2つは女子の間空席で、男子になってから来られました。 なんか身じろぎせず前向いていて、なんか違和感。 選手の動きに合わせて、顔や視線って動くものじゃないですか。 ……と思ったら、まもなく二人とも爆睡。 いや、自分も試合で眠気にとらわれた経験ありなので偉そうなことはいえないけど。 下位グループだってこんな素敵な演技なのにもったいないな、と、イーワンくんの素敵ジャンプを見ながら思ったことであります。 で、目覚めた後は、ひたすら選手や審判、フラワーガール、観客などに対して文句を言ってました。 まあたしかにフラワーガールさんたちはちょっと頑張りすぎていて、観客が選手に拾ってもらおうとわざわざその前に落ちるように投げても、さーっと横取りするように拾っていくのはどうかと思ったけど、さ。 とにかく横からぶいぶい吹いてくる悪意の風を、自分の体でせき止められればいいな、右隣まで届かなきゃいいなと、そんなことばかり思ってました。 ほぼすべての上位選手に対して文句言いまくりだったので、誰のファンで誰のアンチだったかもわからない。 せっかくこんな良い席なのに、楽しめないなんてもったいないなあ、とそれだけ。 いままでどんなショーや試合に行っても、他の観客で不愉快な経験をしたことが無かったので、なかなか強烈でした。
さて、と。 さきに厄落としをしておいて、と。
男子の試合ですよ男子。 もちろん国旗振りまくりでしたとも。 自分の席は選手のリンクへの出入り口が近かったので、演技を終えて戻ってくる選手の眼に必ず入るだろう、と感謝と労いの意を込めてブンブン揺らしました。
以下、やっつけ箇条書き。
オーストラリアのギムナジウム系美少年ことケリーくんは、もう青年に成長してました。うーん、なかなか会心の滑りとはいかないようです。 もう一人、初めて見るオーストラリアの選手も美形だった。なんでや。顔審査あるんか。
SP終了後、頭抱えていたバルデくんは、グレーパーカー衣装のMJでノリノリ。個性に合ってます。
イーワンくんのジャンプはやっぱりなんか好きだー、と思った。
韓国の三人衆は個性それぞれでしたが、一番印象に残ったのはキム・ジンソくん。 ジャンプというジャンプがド根性降りでしたが(笑) シルクドソレイユの盛り上がる曲に合わせて、情熱的に体を動かし、見ていて胸の中を揺すぶられました。 後日放送を見ると確かにあまり足元滑っていないし、ステップノーカンくらってるのですが(苦笑)、見ているものを巻き込む力がありました。 そして演技後、太極旗を振っているところをカメラに抜かれた私(苦笑)。どうせならチャイニーズタイペイとか珍しい旗で抜いてほしかった。
フィリピンのマルチネスくんはショートほど良い出来ではなかった気がするけど、たくさんの花が投げ込まれていました。スケオタ、反応が早い。 そしてカルーザくんは美しい青い衣装に風をはらませ、とても気持ちの良い滑りでした。 本人も会心の出来だったのか、終わって泣き出してしまい、温かい拍手に包まれました。
さてさて。 この大阪四大陸で特に応援していたのはマイナーさんだと前に書きましたが、一応プレゼントを用意していました。 ネットで注文したところ、思ったより日数がかかるとわかり、幸い試合直前に直帰できる大阪出張が入ったので駅ビルで別途購入。初日に受付に預けてきました。 で、ダンナの実家(会場から電車で小一時間)に帰ると注文の品が到着(日中留守にすることが多いので、普段から荷物を実家送りにしてることが多い)。 一応、念のためにラッピンググッズは持参。 ……これはもしかして、投げ込みできるかも、という野望がむくむくと。
というわけで、この日、国旗とともにマイナーさんへのプレゼント(別にご当地Tシャツではなく、いまばりスポーツタオル)を持参。 自分の席はアリーナとはいっても後ろの方で、投げて届かせるのはどう見ても無理。 また、列の中のほうなので、通路に出ようとすると何人もの前を通らなければならない。 事前にマナースレなど読んで、席が中ほどの場合は最前列の人に預けるか、事前に周囲に断りを入れておくべき、ということだったので、休憩中に自分の席から通路までの人たち全員に「次のグループでマイナー選手にプレゼントを渡したいので前を通らせてもらっていいですか」とお願いしました。
さて。 なんだかすごくドキドキしてきて、直前のミーシャの演技があまり頭に入らなかったですよごめんなさい。んでもミーシャ、減点とわかって違反をするのはやっぱりいただけないなあ。 で。 マイナーさんはやっぱり直前までとても硬い表情で。でもコーチに向ける真剣な表情を正面から目の当たりにして、やっぱカッコイイ、でも心配、などと複雑気分。 4Sの抜けは覚悟していましたが、いきなり完全に潰れるとは思ってなくて、もう見ていて完全に浮き足立ちました。鉄板のはずの3Aまで……! でも途中からはしっかりと要素を決めていき、3-1-3も成功したときは泣きそうになりました。 終わったとき、マイナーさんはがっくりとした表情でしたが、私は「よく持ち直した!」と叫びました。 まずはお辞儀のタイミングで見えるように国旗を振ることを優先。 投げ込みは本人リンク上がってからでも、次の選手が滑り始めるまでに放り込んでおけばフラワーガールが拾ってくれるでしょ。でも本人が不本意な出来の時にプレゼント渡すというのもどうなのかなあ。 ていうか、ラッピングのリボン結ぶの忘れていたよ、とゴソゴソしていると、横から「早く」「早く」「急いで」と声が。 顔を上げるとマイナーさんがすーっとこちらへ向かってくる。 あれ?私は投げ込めればいいやと思っていたんだけど、もしかして手渡し間に合わないよーってこと? あわてて皆さんの前を通らせてもらい、がに股で段を駆け下りる。足元がばいんばいんと音を立て、ああ、急ごしらえのアリーナだからベニヤ板だなあ、などと頭の隅で考えている。 フェンス前まで来ると、すでにマイナーさんは通り過ぎかけていたけれど、袋を差し出すと、振り返り手を伸ばしてくれた。 ぽふ、と手渡した。 席に駆け戻ると、「よかったね」「渡せてよかったね」と声をかけられて恥ずかしかった。 仁義は通しておくものです(笑) いや、みなさんありがとうございました。
さて、長々と個人的体験をすみませんでした。
以下、しばらくはまた箇条書き。
無良くんはSPもそうでしたが、フェンスギリギリでひやっとするタイミングが。ちょっともったいない出来でした。
ドーンブッシュはSPはちょっと残念だったのですが、FSは良い感じで「リッキー、やればできる子!」と叫びました。
テンくんは……いつぞやのGPSでもそういったことがあったようですが、転倒だらけで……。でも決して腐らずあきらめず、最後までプログラムを滑り通そうという気概が伝わってきて、胸に迫りました。立派だと思いました。
ハンヤンは最初のジャンプで腕を叩きつけるように転倒し、そのあとずっと恐い顔をしていました。重々しい、笑顔で滑るような曲ではないのは確かなのですが、もしかしたら腕を痛めたのではないかと心配になりました。
羽生くんは本人比、ちょっと気合いが空回っていたかなあ、と。
そしてケヴィン。 その前のシーズンの国別でも感じたのですが、生で見ると氷の上に自分の空気を作ることができるのだなあと。 あまり聞きなれない曲ですが、メロディーの移り変わり、盛り上がりの、ここでこういう動きが欲しい、と思う気持ちにぴったりの動きが重なって、とても快感でした。 どの動きもケヴィンの長い手足を存分に生かし、衣装も彼の上品さを引き立てていました。 これはすばらしい。これはスタオベに値する演技だ、と確信していました。 場内にうずうずとした空気が満ち。 終わった瞬間、膝の上に乗せていた国旗から何から全部落っことして跳ねるように立ち上がり(苦笑)、力の限り拍手し、歓声を上げました。 こちらへと向かってくる彼に「ケヴィーン!!」と叫ばずにはいられませんでした。 ケヴィンの場合、見た目はパーフェクトでも、回転不足のために点数が驚くほど低いということがままあるので、一応覚悟して点数を待ちました。催促の拍手の中を。 点数は素晴らしいもので、回転が認められたんだ!と口走りました。とうとう、やっと、このチャンピオンシップの舞台で。
場内の興奮冷めやらぬ中、高橋選手をコールするアナウンスが流れ、ハッとしました。 自分だけではなく、多くの人がそのときまで高橋選手に意識を向けていなかったような気がします。 私がそれまでに見た限りでは、高橋選手が氷の上に出た瞬間、観客の意識は彼に集中し、直線に滑った選手が点数待ちであろうと、点数アナウンス中であろうと、大ちゃんコールと声援が場内を支配していて、正直、前の選手にちょっと失礼じゃなかろうかと思わなくもなかった。 それが、このときはケヴィンの演技が観客の心をつかんで離さなかった。 無論、コール後は大声援を受けた訳ですが。 最初の両足着氷は、まあ想定の範囲だった。 けれど、度重なるミス。 まるでスローモーションのように目に映るその動きは、まるで踏ん張りが効かない様で、どこか痛めたのではないかと心配した。……むしろ、ケガのようにはっきりとわかりやすい原因があるほうが理解できた。 何も取り戻せぬまま、終わってしまった演技。 点数が出たときの「エーッ」という声は決して不満ではないと思います。点数は出ないだろうとわかっていて、覚悟していて、それでも覚悟以上に、あまりにも低すぎる点数に驚く声だったかと。
正直、ナンソンの演技はあまり頭に入りませんでした。ごめんなさい。
かくして男子終了。 セレモニーを待たずに席を立った人が相当数いましたが、まあ仕方がないかと。休憩中に何度も流れた電車の終電の案内で、結構早めに電車が終わることが周知されていたし、それこそ日帰りで帰る人はタイムリミットがあっただろうし。 でも、もし高橋選手が表彰台に上っていたら、もう少し残っている人が多かったのではないかと意地悪な気持ちになってしまったことは事実です。
ともあれ、いい感じに場内がすいたので、インタビューが見られる位置に移動。 バスン、バスンと場内の照明が落ち、スポットの当たるキスクラを横から覗き込みました。 ケヴィンの細い首筋は、光を受けて白く輝いていました。 キスクラを取り囲んだ観客たちは「ケヴィン、おめでとー」「おめでとー」と叫びました。私も叫びました。
パトさんファンの私が同じカナダのケヴィンを祝福することを不思議に思う人もいるかもしれませんが、私にとってケヴィンはパトリックのライバルであるという以上にカナダ男子を支える同胞であるという意識の方が強いのです。それにカナダ国内でパトリック推しの空気が強くケヴィンがやや不遇な扱いだったこと。彼が物静かに、けれど頑固に高難度の構成に挑み続け、表現についても磨きをかけ続けてきたことを思うと、祝福せずにいられるでしょうか。 それに、国内一強より、複数の強豪がいた方が、圧し掛かる重圧を分け合えるのではないかと。
物静かに柔らかく笑みながら、SPの回転不足を一日の練習で調整したとかサラリと言っちゃうケヴィン。世界選手権への抱負で、今までの彼の成績からすると高い、しかしこの日の彼の演技からすると決して夢物語ではない目標を、穏やかな自信をのぞかせながら口にするケヴィン。最後の日本語のあいさつを聞いた観客の歓声の大きさは、テレビでは伝わりきれていませんでした。
続いて表彰式。 これまた人が少ないのをいいことに、フェンスに張り付いて見物。 全体に仏頂面で、握手を忘れたりしていたハンヤン。あれで緊張していたのかも。 ときどきチラリと照れと笑顔が浮かんで、もしかしてニコニコするのが自分のキャラじゃないとか思ってるのかしら、なんて。とにかくなんやかやでかわいい。 羽生くんは嬉しさと悔しさ半々か悔しさ勝っているのではないかと思えど、表彰台では笑顔。 そして、白く輝きながら穏やかに微笑むケヴィンに、菩薩様を拝んでいるような気持になりました。 パトさんがいない表彰台でオー、カナダを聞くなんて……と感慨にふけってしまった。
ウイニングランで、スイスイと滑ってさっさと上がるハンヤン(苦笑) ケヴィンは声援にじっくり応えながら回っていました。 ここでも間近でおめでとうと言えて満足。ケヴィンだから日本語でいいよね(笑) その気になればハイタッチもできたけど、それはさすがに遠慮しました。
夢見心地で外に出て、iPhoneでさっそくプロトコルを確認。ご一緒頂いた方と「ケヴィンの3Aに加点が付いてる!!」と文字通り小躍りしたのも良い思い出。
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