雑誌のコラムとか、映画評論メインじゃない普通のブログとか、そういうところでなぜか感想を見かけた映画。ずいぶん試写会したのね。 1、2件べた褒めなのはふむふむと頷くけど、3、4件となるとちょっと気味悪くなって、5件目に批判が書かれているとほっとしたり。 まあ、そんなわけで映画村帰りに見に行ってきました。 内容からするとR指定だったのかなあ。
心を持ってしまったラブドールの話……とあちこちのあらすじに書かれていたけど、個人的にはダッチワイフと書いてもらったほうがわかりやすい。 つまりは恋人の代わりを務めるお人形。 見て、ああなんかファンタジーだな、と思った。 人形が生きて心を持って動き出すことが、じゃなくて、描かれる世界全体が。 メイド服を着てよちよちと歩く赤ん坊のような人形を、大して怪しむことなく受け入れてしまう町の人々、特に人形が恋をするレンタルビデオ店のポエミィな青年こそが不思議な存在。 東京の隅田川のそばの、町工場の騒音と学校のチャイムが響く、どこかくたびれた町そのものもまた主役だったような気がする。
なんだか音が印象に残る映画だった。上に書いた町の生活音や主人公が海で拾って以来常に持ち歩くラムネの瓶のカランカランいう音。風に揺れるウインドチャイム。水滴。 そして何より、息の音。吹きすぎる風の音。 無垢でまっしろな人形を満たしていくさまざまな音。
人形が出会う、いろいろな人たちが、それぞれに自分の空虚を抱えながら生活をしている描写も印象に残った。
きれいで、切なくて、物悲しくて、ちょっとあたたかい映画。 あの終わり方は、自分としては釈然としないけど、あれはあれで必然だったのだろうか
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