++たらたら日記++

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キリクと魔女

 なんかNHK衛星第2でやってたので見てみた。
 予備知識はあまりなくて、アフリカが舞台らしいということと、スタジオジブリ(というか高畑氏?)のプッシュありってことくらい。

 ええ、面白かったですよ。
 以下完全ネタバレ。

 主人公キリクは母親のお腹から自力で飛び出してきたスーパー赤ちゃん。で、かなりのミニサイズ。一寸とはいかないまでも一尺もなさそう。でも歩くスピードはすごく速い。
 キリクの村は美しき魔女カラバに脅かされていて、男たちはほぼ全員むさぼり食われ、黄金も奪い取られ、泉も枯らされていた。
 その状況に、体は小さいけれど賢いキリクが立ち向かう……。
 というわけなんだけれども……。

 とりあえず、まず絵がきれい。アニメーションとしてこのツボは外しちゃいけない。
 以前見たポスターから、もっと装飾的というか影絵風にデフォルメ&デコレートされた絵柄なのかと思ってたけど、案外リアルで、人々や動物がしなやかに描き出されている。
 チョコレート色の肌をあらわにした村人たちが、喜びごとのたびに歌い踊るようすが、生命の躍動って感じでよいです。
 んで、キリクがかわいい。ちょこまか動く姿とか、ぽてっとしたいたいけな体型とか。

 絵柄は意外とオーソドックスで。
 お話も昔話の基本をなぞっている……と見えて、実は現代的な感覚がきらめいている。
 小さな英雄であるキリクは、ときに「怖いなあ」とおびえ、冷たく当たる村の子がいることの不満を口にし、独りの戦いを寂しがり、肉親に体を丸め甘える。
 そしてキリクはなぜ魔女がいじわるなのか、何度もたずねる。周囲は「魔女だから」そういうものだとしか答えない。それに納得しないキリクは、魔女の住まいの裏山に住む真実しか語らぬという賢者を訪ね、小さな大冒険を繰り広げる。
 ようやく巡り会えた賢者は語る。泉が枯れたのは魔女のせいではないが、魔女は村人にそう思わせていた。男たちも食われてはいない、と。魔女が人を憎み苦しみを与えるのは、自らが常に苦しんでいるからであると。
 魔女の背に食い込む毒の棘。かつて男たちによって呪いとともに打ち込まれた棘が魔女を苦しめ、また魔力の源になっていた。
 魔女の棘を抜く決心をしたキリクは、賢者にお守りをねだるが、断られる。お守りを手にして安心してしまう心をこそ、魔女は利用するのだ、と。裸で無垢な心を魔女はおそれるのだ、と。

 迷信にすがる……すなわち魔女の驚異を疑いもしない村人の心を利用する魔女と、ひたすら真実を知ろうとするキリク。

 キリクは知恵を巡らし、魔女の棘を抜き、そして……。
 物語は意外な結末を迎える。

 魔力を失うのと引き替えに心身の苦しみから解放された美しき魔女カラバに、キリクはなんと結婚を申し込む。
 カラバはキリクに、お前はまだ小さすぎる、そして結婚した男が女を召使いとして扱うことが自分は嫌なのだと断る。
 そんなことはしない、というキリクに、カラバは寂しげに笑う。男は若い娘に必ずそう言うのだと。
 ならばせめて口づけを、と求めるキリク。応えるカラバ。
 口づけを受け、キリクはみるみるたくましく美しい若者へと変貌する。
 ともに村へ帰る二人。だが村人にとっては見知らぬ男と魔女の二人連れ。皆が拒絶する中、母だけがキリクを見分ける。
 かといって、村人の魔女に対する積年の恨みは消えるわけもなく、手に手に武器を手にして迫る。
 そこに魔女によって小鬼に姿を変えられ使役されていた村の男たちが戻ってくる。歓喜の抱擁の輪の中で、キリクとカラバも愛しげに抱き合う。

 見終わって思ったことは、カラバはなぜ棘を打ち込まれたのだろう、ということだった。
 勝手な解釈だけど、カラバは近在に知られた美女で、多くの男に望まれたのだろう。美しく誇り高いカラバは、男に支配されることをよしとしなかった。ゆえに男たちに憎まれ、呪詛を受けたのだろう。

 えーっと……ジェンダー論?

 これ見た次の日には「キリクと魔女2」をやってた。
 続編じゃなくて、キリクがおチビさん時代のエピソード集。
 ストーリーとしては昔話そのもので、まあ気軽に見られる。
 むしろ、よりグレードアップしたアニメーションの美しさを楽しむ作品でしょう。
 とりあえず、キリクかわいい。

 あ、吹き替え版だったんだけど、キリクの声誰だろうと思ってたら、声変わり前の神木龍之介くんでした。
 し、神童……。
2007年11月07日(水) (感想)

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