こんな耽美なお題、私には無理ッス。
というわけで、思い出話。
自分が小学二年の時の遠足は、電車で数駅の遊園地だった。今どきはどうか知らないが、昔の公立校で子どもにアトラクションで遊ばせるはずもなく、園内を散策して弁当を食べるだけ。 その遊園地にはそれなりに大きなバラ園があったので、そこが散策の目玉だった。 事前の説明で担任教師は「園内に薔薇のトンネルがあるから楽しみに」と言った。 幼かった私は、絵本の眠り姫で見たようなこんもりとした緑のアーチに一面赤やピンクの薔薇が咲き誇っている様子を想像して胸を躍らせたものだった。 実際に訪れたバラ園のトンネルは、校庭の「うんてい」をいくつか繋げたような鉄骨にバラのつるがからんだものだった。2,3本の鉄骨に1本くらいの割合で。見上げればスカスカと空ばかりが目に入った。 ちょうど晩春だったから花はきれいに咲いていたはずなのだけれど、子ども心にガッカリ感ばかりが残った。「しょぼい」という観念が自分に生まれた瞬間かもしれない。
あれから30数年。全国でいくつもの施設が閉園しているなかで、その遠足で訪れた遊園地は改装・改名しつつ現在も生き残っているらしい。ずいぶん長いこと行っていないが、バラ園はまだあるのだろうか。バラのトンネルは当時より少しは繁っているだろうか。そもそも大人の自分の目にはどう映るのだろう。絵本よりも、現実で見た光景のほうが今はもうずっと多いはずなのだから。
配布元:「物書きさんへ漢字100のお題」
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