こんなネタ出しやすそうなお題でなぜにフリートークか。
自分の見る夢はわりと覚えているほうです。夢は誰にも平等に訪れているはずなのですが、記憶に残らない人が多いらしいと聞きます。自分はレムとノンレムの順番と目覚めのタイミングの関係かなあと思っております。 所謂悪夢にカテゴリ分けされる夢もよく見ます。ていうか覚えてるのってほとんどそんな気が。
その中でも忘れられないものを一つ。
舞台は19世紀末頃のイギリス(たぶん)。 とあるお屋敷の主人はすでに引退の身。共に暮らし慕ってくれる家族もなく、常に仏頂面で癇癪持ちのあるじに使用人達は怯えていた。使用人達が怯え暮らしていた理由がもう一つ。主人の唯一の趣味が、インド経由で珍しい生きもの……つまりは猛獣のたぐいを取り寄せて、屋敷で飼うことだった。 ある朝早く、使用人達は大騒ぎすることになる。 主人が顔を珍しく緩めて到着を待ち望み、ようやく先日届いたばかりのある生きものが姿が見えないのだ。
同じ頃。 海に接した街角で。 客待ちをしていた靴磨きの少年(孤児)は、視界の中に見慣れぬ物を認めた。灰色の石畳に溶け込むような色合いをしたその塊はたしかにじりじりと動いていた。 流木を投げ出したようなその塊に、ぎょろりとした目がついていて……少年と目が合った。 と、その塊は驚くほどの勢いで少年めがけて迫ってきた。 少年は知らなかったが、それは南国のワニだった。 少年は悲鳴を上げて逃げようとした。 ワニはその不格好な姿からは思いもよらぬ早さで近づき、飛びかかった。 視界一杯に広がる灰色の巨体。 少年は気を失った。
少年が気付いたとき、あたりは人だかりだった。 そばにいた警官の言葉によれば、通りすがりの紳士がとっさにワニと少年の間に入り、護身用のピストルとステッキでワニを撃退しようとした。 しかし……結局紳士は命を落とした。
まもなく、ワニの飼い主の尽力で、少年は孤児のための施設に入れられることとなった。それが少年が本当は望んでいなかったことだとしても、自分のために犠牲になった人がいるのだと思えば、差し出された道を断るわけにはいかなかった。
数年後、成長した少年の描く絵が評判となるが、それはまた別のお話。
…………というような感じの夢。 とにかく追いかけられる感じとか、ワニが覆い被さってくる感じとかが残っていて、しばらく忘れられなかった。
配布元:「物書きさんへ漢字100のお題」
|