昨年末のことですが、京都駅ビルでやっていたレオ・レオニの絵本原画展を見に行きました。 名前を聞いて「誰?」と思う人でも「スイミー」はご存じではないでしょうか。小学校の国語の教科書にも掲載されているらしいですから。(スイミーの原画は今回展示されていませんでしたが) 他に「フレデリック」などネズミを主人公にした絵本が数多くあります。
フレデリックとか絵本で見てさまざまな素材を切り貼りしたものだとわかってはいたけれど、生で見ると立体的に貼り重なっているのが見えてなんか感動。 もうずいぶん古い原画のはずなのにネズミのお目々一つ外れずにきちんと色鮮やかに保存されているのを見て、どれだけ大切に取り扱ってきたかが偲ばれます。
イタリアの人だと思っていたけれど、オランダ出身だったのですね。そして彼もユダヤ人で、一時期アメリカに亡命を余儀なくされた……。 元々イラストレーターとして地位を確立していて、絵本を描き始めたのはずいぶん遅く、最初の絵本「あおくんときいろちゃん」はお孫さんにつれづれに即興で作ってあげたちぎり絵が元だとか。 あたりまえなんだけど、生で絵を見ると、本当にこの人、絵が上手いんだなとしみじみ。 色の塗り方がまったくムラがないし、鉛筆で描かれた石ころとか見ても、普通タッチがうかがい知れるのに、まるで白い紙から石そのものが質感を持って生まれ出でたように見える。
貼り絵用にキープしてあったたくさんのネズミの胴体や大きなお耳のパーツがかわいかったです。
出口の物販スペースで物色していて、ゴムはんこもいくつかあったのですが、あおちゃんときいろちゃんのデザインはただの丸でした……(苦笑)
上で、レオニもユダヤ人でした、と書いて、あれそういえばまだ日記書いていない、と思い出しました。 11月の話ですが、京都文化博物館でシャガール展を見てきました。 シャガールと言えばパリというイメージだったのですが、旧露西亜(現在のベラルーシ)出身だそうです。 今回の展示はどちらかといえば初期の作が多く、シャガールと聞いて思い出すけぶるような輪郭と色彩ではなく、くっきりカチッとしたタッチのものがかなりを占めていました。道端にびっしりと木の杭を打ち並べた故郷の小径と家畜たち、音楽と祈りが満ちるユダヤ人たちの暮らし、そして愛妻との日々。 今回の目玉作品の一つは故郷で新婚生活を送っていた頃の画家本人と妻をモチーフにした数点で、描かれた画家の顔が場内に貼られていた写真そっくりで笑ってしまいました。「ヒャッハーッ、オレこんな高嶺の花を手に入れたんだぜスゲーだろ」とアフレコしたくなるような勝ち誇った笑顔が微妙に腹が立つ(笑)
ふたつめの目玉は、ユダヤ劇場設立に際しシャガールが描いた壁画ほぼ全作(消失したものは除く) 展示スペース丸々ひとつ使って劇場に飾られた壁画の様子を再現していました。間近で見ると人物の身に着けた衣装の飾りレースまで細かく描かれていました。 長く見ているとちょっとエネルギーに圧倒される気分。
3つめの目玉は、いにしえのギリシャで書かれた物語「ダフニスとクロエ」の挿絵ひと揃い。これはかなりシャガール後期の作のようです。
今回の展示の正式タイトルは「シャガール展2012 −愛の物語−」だそうで、まあ元からシャガールと言えば恋人たちの絵というイメージなのでそれは良いのですが、絵に付けられた解説があまりにも愛を謳いすぎていてちょっと胸焼け。 で、展示の中間地点で掲示された年譜を見ていて、亡命先(ユダヤ人迫害から逃れた)アメリカで愛妻を亡くして失意で筆を持てなくなった旨の記述の後、地元の女性との間に息子が生まれ、フランスに戻る際女性と別れたとサラリと書かれていて「え?」と思ったのですが、解説には晩年の再婚相手については書かれていてもその辺りに触れたものは全く無し。 でも出口の物販スペースで、その女性についての本と息子の手記がしっかり売られていて笑いました。
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