映画村ヒーローショーから一夜明け、7月16日(火) まず向かったのは京都国際漫画ミュージアム。 目的は6月末から始まった諸星大二郎原画展。 (ツイッターで取り上げてくださった方、ありがとう。そして貴女は見られないのにホイホイ出かけてごめんなさい) エントランス入ったところにいきなり複製原画(販売品)が飾られていてビビッた。 受付の前で原画展していたのでさらにビビッた。 原画展、会期が3ヶ月と長いなあと思っていたら、高橋葉介セレクション、藤田和日郎〜、諸星大二郎〜と一ヶ月ごとに変えるらしい。こりゃしまった。あと2回来にゃならん。
原画の数はパネル数枚に収まる程度で、そんなに多くなかった。カラー16点、モノクロ4点。目立っていたのは画集「不熟」カバーの原画。大きい。全部に選者のコメントつき。こういうの読むの大好き。 まずは当然ながら稗田礼二郎シリーズの絵が多く、次にマッドメンシリーズ。コドワの正面ドアップの目力の強さにたじたじ。オリジナル系だと、縄文少女の絵について、高橋氏が体毛の生え方の描き方に言及していてちょっと引きました(笑) やどかり子どもの絵は、解説じゃ兄弟になってたけど、私は男の子と女の子だと思ったけどなあ。胸ぺったんこでも。うーん、でもモロ☆さんの少年は基本色気むんむんだからわからんなあ。 アダムとイブの裸エプロンとか、こんなの描いていたんだ……ていうか、それを選ぶほうも……(笑) セレクションに少女モチーフの絵が多かったのは選者の趣味かしら。
さて、京都国際マンガミュージアムにはちょくちょく来ているのですが、そういえば何読んだとか書いていなかったなあ。 ので、この際ちょっとまとめて。 ここのマンガ展示を大きく分けると2つ。メイン展示会場と壁書架。メインは年代ごとに分けておいている。壁書架は貸本屋さんの蔵書をそっくり譲り受けたものが基本となっているらしい。最新のものを読むには向いていない。あとはちょこちょこ企画展示。
ベルバラ連載期の掲載誌マーガレットをおいていたことあったけど、どのマンガを見ても絵が同じに見えた。感情表現描写のパターンもギャグ絵の入れ込み方もそっくり。毎号読んでいた当時の読者はちゃんと区別ついていたのだろうか。 ベルバラもエースをねらえの山本鈴美香もはじめはちょっとギャグっぽい絵がはさまることがあったけど、だんだんとシリアスにドラマチックに、構図も特徴的になっていくのよね。
安野モヨコさんが庵野秀明氏との結婚生活を描いた「監督不行届」も読んだ。本編に出てくるオタクなあれこれについて巻末の詳細な注を見るのもまた楽し。庵野氏は自分より少し上の世代のオタクのようだけど、オタクというのは遡っていろいろ楽しむ生き物なので、だいたい把握できます。そもそも今のオタクで初代ゴジラや大魔神をリアルタイムで見た層はそういないと思うし。
自分の世代のオタクなら知っていて当然なのにまだ読んでないマンガ読んでみようと思い、まずは高野文子の「絶対安全剃刀」。 高野文子というとおかっぱ頭にかぼちゃパンツ、簡単な顔をした少女の絵のイメージしかなかったのだが、この短編集は70年代後半から80年代頭の香りがふんぷんとした。 そして非常に少女的な混沌。 まだ少女と呼ばれて差し支えないリアルタイムに出会えればよかったかもしれない。こんなもう熟年の玄関口の乾きひびわれた感性じゃなくて。でも、若いときであれば拒否反応が出たかもしれない。自分は綿の国星をちらりと見てどうしようもなく恐怖を抱いてしまった人間なので。
坂田靖子の「バジル氏の優雅な日常」も読んだ。 坂田さんのは愛らしいモノノケが出てくる短編などは大好きでよく読んでいたけれど、もうひとつの路線、ちょっとアンニュイな英国紳士の世界は手が出ずにいた。 なんとなく、自分の感性がほどよく摩耗していて良かったかな、と。 たぶんたっぷりとそこを流れているであろういろいろな含みを、うっすらとその存在を感じつつ、流してしまえる鈍さを身につけられていて良かったと思うのだ。うまくいえないけど。
今は順々にくらもちふさこ作品を読んでいる。 高校生の頃、なぜかクラスの女子の間で別冊マーガレットが回し読みされていた。 そろそろ尾崎豊が現れ、紡木たくが出てくる頃。 あまり少女マンガ慣れしていなかった自分は若干偏見を持っていた。主人公はクラスでも余り目立つ存在ではなくてコンプレックスを持っているけど、片思いの相手・人気者のあの人はどういうわけか主人公の良いところを知っていて、そのことは読んでいる側には見え見えで、最後は甘甘ハッピーエンド。予定調和。 でもくらもちマンガはなんというか格が違った。主人公のときめきや甘い思いや不安や痛み、揺らぎ、自己嫌悪がひどくリアルに響いてきた。相手の男の子もちょっとスケベだったり意地悪な面があったり、先がまったく読めなかった。 今回まず「いろはにこんぺいと」から「アンコールが3回」まで自分が読んでいた頃のを読み返してみた。 ……こんなに忘れているものなのか、とちょっとショック(笑) で、当時はまったく読みとれなくてそこがリアルだと思っていた男側の気持ちがちゃんと発信されていることに気づいた。 そして時代の空気感。 「いろは〜」はまだ70年代的な空気の名残が漂っていたけれど、徐々に80年代の浮遊感と喧騒を伴った華やかさを描き出していく。 俳優やミュージシャンたちの華やかな世界とその裏側。長い前髪を額に下ろした細面のダブダブ服を着たスターたち。 トーンワークがにじむ明かりを空気ごと描き出す。 高校を出て、「アンコール〜」の途中で別マを読まなくなってしまったけど、今回たどり着いたラストシーン、主人公が女神のように神々しかった。 90年代、21世紀のくらもち作品を私は知らない。 少し前、雑誌の表紙にその名と連載開始という言葉を認めてパラパラとめくり、まるで別人の、今風の絵になっていることに驚いた。 時代の空気をしっかりとつかんでその時々の気持ちをくみ上げて描いていくことが出来るのってすごいと思う。 さて、80年代初頭の華やかな作品を読んで、今度は初期作品から読み進んでいった。 なんとまあ、70年代の香りただよう少女マンガであることか。絵柄も世界観も。でも少女の心の微妙なひだを描くうまさはやはり飛びぬけているのだよね。 もう少ししたら80年代後半以降の作品の変化を見届けたい。
あ、フィギュア見るようになってあちこちで名前を目にしていた「銀のロマンティック…わはは」も読んだ。そしてラストでうっかり涙ぐんだ。敗北感。 おとうちゃんが素敵だと思う。
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